企業は経営の透明性を
(2007年3月)
(「編集後記」『東京国際大学論叢』第12号)
米誌『Time』は、2006年の「Person of the Year」に「You」を選びました。
ネット社会がリアル社会に地殻変動を起こす「総表現者時代」「総評論家時代」の到来を予見した決定です。かつてのマーケット理論は「ニッパチの法則」でした。「2割の商品が売り上げの8割を占める」「航空会社の乗客の2割が売り上げの8割を占める」などです。
今は市場という恐竜を支配するのは、ヘッドではなく、長いしっぽ(ロングテール)となってきています。ロングテールとは、ウェブ2.0の主柱をなす概念で、無数のYouのことです。
紙媒体の雑誌はプロの書き手と編集者のコラボによる作業ですが、ウェブ2.0では無数のYou(=ロングテール)が、編集者を通さずにコンテンツをつくっていきます。
ウェブ2.0の例としては、クチコミサイトの「価格.コム」「@コスメ」、Q&Aコミュニティの「はてな」「OKWave」、SNS(ソーシャルネットワークサイト)の「mixi」「GREE」、ブログの「ココログ」「エキサイトブログ」、さらには誰もが書き込めるネット上の百科事典「 ウィキペディア」、「アマゾン」の書評、動画共有サイト「YouTube」があります。
ロングテールは、長年にわたり市場経済を支配してきたニッパチの法則を打ち破るパラダイムであり、無数のYouにとって血湧き肉躍るフロンティアの登場です。(ブッシュはイラクという頭をたたくのに性急なあまり、世界人口の4人に1人を占めるイスラム教徒というロングテールを無視しているようです。)
総表現社会は総評論家時代でもあります。無数のYouによる格付けは検索サイトにも如実に表れます。検索ランキングのトップは、県は神奈川、市は横浜、大学は早稲田、会社はシャープです(Google 2007年1月)。
企業、公共機関には、主観的な努力の他に、無数のYouの審判に耐えられる透明性、CSR(企業の社会的責任)、コンプライアンス(法令遵守)が求められてきています。 (桑原政則:論叢編集委員長)
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